パン教室講師noranekoです
今回はパン作りに必要不可欠な「イースト」(酵母)について
そもそも何者なのか?生物学的に解説します!
Ⅰ.「イースト」とは何者?
覚えておこう!
- 英語で・・・yeast (本来は「酵母」)
- 小さじ1・・3.3g
1)「イースト」は、自然界の生物です。
そもそも生物って何でしょう?
(1) 外の世界と膜(まく)で仕切られていて、内部構造を持つ。
(2) エネルギーを得る為の活動、代謝(たいしゃ)を行う。
(3) 自分の複製(ふくせい)を作る。
生物の定義って、これだけなんだ
確かにそうだね!
2)「微生物」の仲間
「イースト」は生物で、
生物学的には「微生物」です。
「箘」の仲間でもあります。
顕微鏡でしか見ることのできない微細な生物(カビ・酵母・細菌など)
さまざまな体外の有機物(デンプン・糖・たんぱく質など)を分解し、細胞表面から吸収してエネルギーを得るという「代謝」⇓をします。
代謝って?
- 生物の中で起こるさまざまな化学反応のこと。
- 代表的には「消化」「呼吸」「発酵」「光合成」などがある。
植物は「光合成」により”光”をエネルギーに変えているよね、人間は「消化」や「呼吸」によってエネルギーを得る。
微生物も、通常は酸素を吸って「呼吸」をし、大きなエネルギーを得ているのです。
3) 微生物中の「酵母」に属する
「イースト」は、「発酵」という代謝を行う「酵母」(こうぼ)に属します。
ぶどう、りんごなどの植物に寄生するものが多く、くだものや木の皮、樹液、花の蜜、土の中などに生息しています。
単細胞で楕円形、出芽※という繁殖方法で子孫を増やす。
※出芽:親細胞から子細胞が芽を出し、育つと分離します。
周りに酸素があるときは「呼吸」をし、酸素がない時は『酵素』(こうそ)を出して「発酵」という代謝をして生命を維持します。
「発酵」は酸素がない時だけの代謝なんだね!
4) サッカロマイセス・セレビシエ属
「イースト」は、アルコール発酵ができる酵母、サッカロマイセス属のセレビシエ種に属します。
「サッカロミセス・セルビシエ」とも言う。
- 主に「アルコール発酵」(糖を分解してアルコールを生成)する酵母の総称
- 有用な酵母菌として、古くから食品製造に利用されている。
ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母,ウィスキー酵母、パン酵母などに分類される。
5)製パン性に優れる「パン酵母」=「生イースト」
「サッカロマイセス・・」の中でも、パンを膨らませる能力が高い品種を選抜したものを「パン酵母」と言います。
①「パン酵母」の増殖
栄養源として糖蜜※を使い、培養タンクの中で増殖します。
※「糖蜜」(とうみつ)とは?
砂糖を作る時の副産物で、糖液を蒸発・濃縮させて結晶を分離したあとに残る茶褐色の液体です。
ミネラルやビタミンを含み栄養価は高い。
糖分50〜70%。英語では「モラセス」(molasses)
”モラセス”ってフランスパンやベーグルを湯通しするときに使うよね!
増殖された「パン酵母」は、「生イースト」となります。
②「生イースト」の特徴
「生イースト」は、粘土のようなかたまりで、無添加100%の「パン酵母」です。
短時間でもよく発酵し、さまざまな種類のパンに使え、オールマイティー。
ドライイーストの2~3倍を目安に、水に溶かして使用します。
「生イースト」1グラムあたりに、約100億個のイーストがいるんだって!
100億!!・・・(◎_◎;)
「生イースト」のデメリットは、予備発酵を必要とし手間がかかり、冷蔵で2週間程度しか保存できないと言うこと。
パン屋さんでは使われていますが、家庭では扱いにくいため改良されたのが「ドライイースト」です。
Ⅱ.「ドライイースト」とは?
1)「ドライイースト」
「生イースト」を熱処理して乾燥させ、長期保存できるようにしたものが「ドライイースト」です。
「ドライイースト」には、以下の缶入りの「ドライイースト」と、「インスタントドライイースト」があります。
① フランスパンに向く「ドライイースト」
「ドライイースト」は、粒が大きく球体をしており、使うときは予備発酵が必要です。 こちらも無添加100%の「パン酵母」。
缶に入ってるこのタイプね!⬇
生地の伸展性が高く、特有の芳香をかもし出す長時間発酵のリーンなパンに向いています。
フランスで作られているハード系パンはこれと同じイーストで作られているんですよ。
よく見ると、缶に描かれているシェフがフランスパンを持っているんだよね!
② 粉にそのまま投入「インスタントドライイースト」
「ドライイースト」を顆粒状に加工し、予備発酵なしで使えるようにしたものが「インスタントドライイースト」です。
しかも常温で2年保存できます。(冷暗所にて保管、開封後は袋口を閉めて冷蔵庫に)
おなじみのこのタイプ!⬇
便利なイーストですが、デメリットとしては、添加物として乳化剤(ソルビタン脂肪酸エステル)やビタミンCが入っていることが多い事ですね。
英語表記の「yeast」は、本来「酵母」を意味し、もっと広い意味で使われています。
日本では、「イースト」=「パン酵母」が一般的な解釈になります。
ちなみに市販で出回っている「イースト」はほとんどが正式名「インスタントドライイースト」です。
Ⅲ. どうやってパンを膨らませてるの?
さて「イースト」は、パン生地の中でどんな活動をしているんでしょう?
① 呼吸
パン生地の中に酸素がある状態(こねた後)では、「イースト」は呼吸をしています。
大きな膨らみは呼吸によるものです。
② アルコール発酵
生地中の酸素がなくなると、アルコール発酵に切り替わり、ゆっくりと膨らんでいきます。
「イースト」は生地の中の糖を食べて、炭酸ガスとアルコールを生み出すことで生命を維持します。
この活動がもっとも活発になるのが30℃前後です。
「こねあげ温度」を28℃にもっていくのは「イースト」がベストな温度で発酵にはいれるようお膳立てしてあげてるんですね!
「イースト」の生態がわかると工程の意味も理解しやくなるよね^^
③ グルテンの協力
発生した炭酸ガスを風船のように閉じ込める役をしてくれるのが小麦の「グルテン」です。
小麦の胚乳にある「小麦タンパク」には、グリアジンが約33%、グルテニンが約14%含まれ、その他の不溶性のたんぱく質とあわせて、約85%がグルテンを形成します。
グリアジンは「弾力」、グルテニンは「粘着力」を持ち、その2つが水を吸収して網目状につながったものが「グルテン」です。
グルテン膜
網目構造になった「グルテン」が、薄い膜状に広がったもの
この膜がパン生地の骨格となり、「イースト」の出す炭酸ガスを包み込んでくれるから、パンが立体的に膨らむんだね!
「イースト」と「グルテン」の奇跡的な出会いがあったから、パンができたんだね♪
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