小麦ってどうして「コナ」状なんだろう?お米は「粒」なのに・・・
こんにちは、パン教室講師noranekoです
今回は、パン作りの主役「小麦粉」についてわかりやすく解説しますね!
Ⅰ. 小麦の特性、米との違い
「小麦粉」は、”小麦”でできています。あたり前^^;
(英語)
小麦・・・wheat、小麦粉・・・flour、ふすま・・・bran、米・・・rice
1)「お米」と「小麦」
● お米
外皮が薄いので、少し剥がせばきれいな胚乳が出てきます。
胚乳は硬く、ツブ状での保存が可能です。
特に味付けや調理をしなくても、そのまま単体で炊いて食べられます。
● 小麦
外皮(ふすま)は、何重にも重なっていて厚みがあり、窪みから中に入り込んでいます。
しかも、中の胚乳部分は柔らかくてもろい。
なので、粉砕して「ふすま」を取り除き、胚乳を粉状にして保存するのです。
「小麦粉」は単体で調理することはなく調味料が加わって初めて味のある食べ物になります。
その点、お米はよくできていますよね!
「お米」って調理が簡単だよね、
超便利な”インスタント食品”と言ってもいいかもね
お米はしかも収穫量も多く、アジアの人口が多いのはお米が採れるからなんだね。
でもちょっと手間のかかる”小麦”、なぜこんなにも世界中で人気なんでしょう?
2)小麦は唯一無二の武器を持つ
麦類は他に、大麦、ライ麦、オーツ麦などがありますが、
水でこねるだけで、粘りと弾力が出て編み目構造を形成し、膜状に広がるのは”小麦”だけ。
それは「グルテン」を持っているから。
注)正式にはグルテニンとグリアジンです
そもそも「グルテン」を持っている植物は麦類以外にもなく、ほぼ小麦だけ。
そのおかげで、弾力のある「パン」やコシのある「麺類」が作れるのです。
またお菓子作りに使う「薄力粉」も、適度なグルテンが生地中のデンプンがバラバラにならない様に繋いでくれているのです。天ぷら、ホワイトソースなどもそうなんだよ。
「グルテン」ってすごいんだ!!
3)小麦粉の成分や分類
基本中の基本なので、さらっと覚えておいてね
●「小麦粉」の中身(成分)
でんぷん質(75%)、たんぱく質(7~13%)、水分(14%)、脂質(2%)、灰分(~1%)
● 大きく4つに分類
たんぱく質含有量、グルテンの質、でんぷんの質によって、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉に分類。
● 「灰分」(かいぶん)による分類
「灰分」 とは、胚芽部分や外皮のミネラルのことで、この数値が小さい方が”白く高級な粉”、大きくなるにつれ”暗く低等級な粉”とされます。(※低等級な粉は栄養価が高いので近年は人気です)
● 栽培方法による分類
「秋まき小麦」「春まき小麦」「初冬まき」に分かれます。 詳しくはこちらへ⇩
でも、”小麦”って、日本では自給率が低いよね、
どうしてなのかな?もう少し踏み込んでいきましょう!
4)お米と小麦はどこで生まれた?
●”お米”の発祥
お米(イネ)は、縄文時代後期に「中国」から伝来しました。
温暖湿潤な気候を好み、水田にたっぷり浸かって育ちます。
稲穂が実るころには晴れたお天気が続くのがベストです。
日本の四季にぴったり合ってるんだね!
● ”小麦”の発祥
小麦が生まれたのは、乾燥地帯「中東」です。
アラビア半島のつけねのあたり、
メソポタミア文明が栄えた三日月状の地域、
「肥沃(ひよく)な三日月地帯」です。
気候は温暖で肥沃な土があり、さまざまな植物が生育していました。
約1万年前、ここで初めて人類は、野生の”麦”と出会い、農業という文化が発展していきました。
お米と小麦は正反対と言ってもいいくらい、育ってきた環境が違うんだね!
5)小麦はどこで生産が盛んなの?
● 小麦の生産の多い国
外務省さんの資料をお借りしました。
※橫スクロールできます
生産国 | ランキング(小麦) | 小麦生産量(万トン) | ちなみに人口(万人) | ちなみにコメ(万トン) |
中国 | 1位 | 1億3000 | 14億3700(1位) | 2億900(1位) |
インド | 2位 | 1億300 | 13億6600(2位) | 1億7700(2位) |
ロシア | 3位 | 7400 | 1億4500(9位) | |
米国 | 4位 | 5200 | 3億2900(3位) | |
フランス | 5位 | 4000 | ||
カナダ | 6位 | 3000 | ||
ウクライナ | 7位 | 2800 | ||
パキスタン | 8位 | 2400 | 2億1600(5位) | 1100(9位) |
ドイツ | 9位 | 2300 | ||
アルゼンチン | 10位 | 1900 | ||
日本 | (参考) | 100 | 1億2600(11位) | 1000 |
上位の国は、広大な平原を持っている国が多いですね、
中国とインドは人口が多いので、ほとんどが国民の主食として消費されています。
また、フランスやウクライナなどのヨーロッパの国は「地中海気候」が栽培に向いているのです。
けど、日本の小麦がこんなにしょぼいとは知らんかった・・・(×_×)💧
ちなみに日本の小麦の9割は、アメリカ、カナダ、オーストラリアから輸入してるんだよ
Ⅱ. 「国産小麦」事情
”小麦”は乾燥地帯に生まれた為、梅雨があり湿度の高い日本での栽培には向きません。
長い年月をかけて日本の風土に合うように改良されてきたんですね。
1)小麦はいつ日本に来たの?
小麦は弥生時代にすでに日本に伝わっていました。時代別に見てみましょう。
時代 | 小麦に関するできごと | 当時の食べ方 |
弥生 | 大陸から「小麦」が伝わる | 重湯 (おもゆ) |
鎌倉末期 | 菓子の作り方が伝来 | 饅頭 (まんじゅう) |
安土桃山 | 鉄砲と共にパンが伝わる (普及はしなかった) | 発酵パン |
江戸 | 中力粉、薄力粉の栽培が盛んに | 麺類、和菓子 |
江戸末期 | 長崎で初のパン屋開業 | 硬パン |
明治 | 「ヨコハマベーカリー」開業 | イギリス風型焼きパン |
明治 | 「木村屋」のパンが大ヒット | あんパン |
昭和 | 「学校給食」でパン食 | コッペパン |
昭和末期 | 国産小麦によるパンの開発 | 国産小麦パン(試作) |
平成 | パンの消費額が米を上回る | 多種のパン |
随分と昔に伝わっていたのに長い間普及せず、江戸時代あたりからやっと、「中力粉」の栽培が盛んになったんだね。
でも、「強力粉」に関しては、昭和時代まで全く栽培されず輸入に頼っていました。
平成になってやっと始まったんです。
2)国産強力粉が定着するまで
①人気のなかった「はるゆたか」
昭和時代の終わり頃、当時北海道で生産されていた”春まき小麦”「はるゆたか」は、パン用としての需要はまだなく、”うどん用”として出回っていました。
ですが、色が白くなかった事から、うどん用としてもあまり人気がなかったんです😞
②輸入小麦のスクープ
昭和時代の終わりに輸入小麦の農薬(殺虫剤)使用が発覚し、「安全な国産のパンを作ろう」という動きが活発になりました。
③パン用小麦「はるゆたか」の誕生
パン用小麦の開発に伴い、蛋白量の多かった「はるゆたか」が採用され、国産で初めての”パン用小麦粉”としてデビューすることになりました✨
④栄光の日々から幻に・・
平成元年に「はるゆたか」は全国で注目の的となり、”国産強力粉のレジェンド”と言われました,゚.:。+゚
しばらく栄光の日々を送っていた「はるゆたか」ですが、途中から気候変動による夏の豪雨に悩まされるようになり、とうとう生産中止となってしまったんです。
⑤改良種「春よ恋」の時代へ
その後は、改良された後継種「春よ恋」が後を継ぎ、主流小麦となっていきました。
そんなわけで「はるゆたか」は”幻の小麦”と言われてるんだよ
その後どうなったかは下記の記事を読んでみてね!
⑥北海道以外でも定着
最近は品種改良により、本州から九州まで”パン用粉”の栽培が盛んになっています。
※橫スクロールできます
府県 | 岩手 | 長野 | 北関東 | 茨城 | 埼玉 | 愛知 | 兵庫 | 鳥取 | 瀬戸内海付近 | 山口 | 熊本 |
強力粉・銘柄 | 南部地粉 | 華梓 (はなあずさ) | 新・藤 | ゆめかおり | ハナマンテンブレンド | ゆめあかり | 北野坂 | 大山小麦 | せときらら | ニシノカオリ | 南のめぐみ |
3)学校給食も国産小麦へ
国産小麦の栽培が盛んになってきてはいるのですが、いまだ日本で消費される小麦の9割は、外国産小麦です。”ポストハーベスト問題”も解決されていません。
※下記検査結果参照(「全粒粉パン」の検出率に注目してくださいね)
➪食パンの残留検査(2019年3月から4月)
そんな中、滋賀県の公立の小中学校(約300校)の給食が、2022年度から「県産小麦100%」となりました。
国内では、北海道と山口県に続いて3番目。
使われる小麦は「ミナミノカオリ」と「ゆめちから」です。
すごい!小中学校のお子さんをお持ちのご家庭は一安心だね。
詳しくはこちら⇨日本農業新聞(10月17日)
今後も国産小麦の国内需要が高まるといいですね!
ご訪問ありがとうございました。
参考にさせて頂いた書籍です。
小麦について広範囲にしかも奥深い内容です。
⇩
スポンサーリンク
【じゃらん】料理、温泉、おもてなし…クチコミで選ばれた人気宿ランキング