初冬まき小麦「はるゆたか」
※画像は全て”江別製粉”さんの「画像ライブラリー」からお借りしています
小麦の「春まき」と「秋まき」って、どう違うんだろう?「初冬まき」っていうのもあるらしいよね・・・
こんにちは、パン教室講師noranekoです
今回は、小麦の栽培方法の違いについて解説します!
Ⅰ. ”秋まき”と”春まき”、”初冬まき”の違い
1)まず、3種の小麦の特徴を比べてみよう!
それぞれ、得意なことと弱点が違います。
栽培方法 | 秋まき | 春まき | 初冬まき |
多雨 | 雨 | 雨 | 雨 |
冬 (寒さ) | 寒さ | 寒さ | 発芽状態なら冬越し可 |
銘柄 | キタノカオリ ゆめちから | 春よ恋 春きらり | はるゆたか |
2)3種の栽培カレンダーを見比べてみよう!
秋まき | 春まき | 初冬まき | |
9月 | 種まき | ||
10月 | 発芽 | ||
11月 | 種まき | ||
12月 | ⇓ | 発芽 | |
1月 | ⇓ | ⇓ | |
2月 | ⇓ | ⇓ | |
3月 | ⇓ | ⇓ | |
4月 | 種まき 発芽 | ||
5月 | |||
6月 | |||
7月 | |||
8月 | |||
秋まき | 春まき | 初冬まき |
驚くことに、種まきの時期が3つともバラバラなのに、収穫時期は同じころなんだよね!
ほんとだ!7月8月に集中してるんだね!
Ⅱ. 3つの栽培方法から紐解く「国産小麦」
1)秋まき小麦とは?
「きたほなみ」などの中力粉、薄力粉が秋まき小麦🍁
小麦は元来「秋まき作物※」こちらが基本で、世界的にもメジャーです。
●冬の寒さを体験して初めて穂を出す性質の作物
レタス、キャベツ、玉ねぎ、水菜、白菜、ほうれん草、小松菜、ごぼう、カブ、大根、さやえんどうetc
雪の下は、ほどよく湿度もあり、0℃以下にはなりません。
「秋まき小麦」の新芽はじっと耐えて冬を越し、春の雪どけとともに勢いよく伸びていきます。
栽培期間が10ヶ月と長いので、収穫量も多く効率のいい栽培方法なのです!
「ドルチェ」(北海道産薄力粉)
深い味わいでパサつかずしっとりとした仕上がり
ほんのり甘い香り、スポンジやクッキーに
2)春まき小麦とは?
強力粉(パン用粉)が春まき小麦🌸
生産地は、冬の厳しい北ヨーロッパ、ポーランド、ロシア、北アメリカ大陸北部、北海道の一部です。
あれ?「春まき小麦」は寒さが苦手なんじゃないの?
そうだよね、実は寒さに強い「秋まき小麦」でも、極寒地域の冬は耐えられません(>_<)
食料が乏しかった時代、なんとか小麦を作れないかと品種改良し、
冬越しをしなくても、温かい期間だけで育って穂を出してくれる種類を選抜して生まれたのが「春まき小麦」なんです!!
春から夏、わずか4か月で収穫できる優れた品種なんだよ!
しかも「春まき小麦」は蛋白質量が高くグルテンが豊富なので、パンがよく膨らむんですね!🍞
日本でも、昭和末期頃から「春まき小麦」が北海道で試作され、
平成初期には、”パン用粉”として流通を開始しました。それが”はるゆたか”という小麦です。
ですが、平成7年頃から気候変動により収穫期の長雨が続き、”赤カビ病※⇓”や”穂発芽(次項で解説)”に悩まされ、2年連続の大不作となった後に生産中止となったんです😭
麦類によくある病害。感染すると、粒の成長が阻害されたり、穂全体が枯れてしまう。
人や動物が食べると消化器系への中毒症状を引き起こす。また免疫機能の抑制等や、発がん性を有するとの報告もある。
2002年(平成14年)に厚生労働省が、小麦の赤カビ毒「デオキシニバレノール(DON)」の濃度を1.1ppm以下の暫定基準値を設けています。
近年では、2011年、2012年、2016年、2018年に全国的に多発しました。
wikipediaより
”はるゆたか”が「幻の小麦」と呼ばれるのはそのためで、
その後は、雨や湿度に強く改良された”春よ恋”が、主流となりました。
”春よ恋” はホクレン農業協同組合連合会が育成した、日本で唯一の民間育成品種です。
「春よ恋100Advance」
ハルユタカの系統を受け継ぐ「春よ恋」100%。
ロング挽き(挽きぐるみ)による、強い風味や味わい。
品質がブレにくく、外国産小麦と変わらぬ吸水の良さ。
モチモチとした食感、やさしい甘さと香り♪
3)初冬まきパン用粉(強力粉)の登場
”はるゆたか”の復刻を願って開発された「初冬まき☃」
「生産中止となった”はるゆたか”を何とか復刻できないものか?」
製粉会社”江別製粉(えべつせいふん)”さんと共に試行錯誤を繰り返されていた、江別市の「片岡農園」片岡弘正さん。
ある時、「初冬まき」という栽培方法があることを知らされ、無謀な挑戦に取り組むことになります。
今まで誰もやったことのなかったその栽培方法は、簡単にできたのではなく、相当な年月をかけて確立されたそうです。
そのおかげで、今も ”はるゆたか” は流通しているんだね😭
”初冬まきはるゆたか”は、雪がふる直前の11月に種をまきます。
出始めた芽の上にはすぐに雪が積もり真っ白になります。
翌年の春、雪どけ後の”はるゆたか”です。
冬を越した”はるゆたか”は、「春まき小麦」よりも2週間ほど早く成長し、7月中旬に収穫できるので、苦手な8月の雨期を避けることができるのです!
☆「はるゆたかの父」片岡さんの動画です。
小麦農家さんは「春まき小麦」を”ハルコ”、「秋まき小麦」を”アキコ”と言われてるんだねー^^
7月の“はるゆたか”の収穫です。
「幻の小麦」と言われていたのが嘘のようです,゚.:。+゚
”はるゆたか”の復刻を願う人々の想いが叶ったね,゚.:。+゚
「楽農園カタオカはるゆたかストレート」
”はるゆたか”を今も食べられるのは、片岡さんのおかげ!そんな片岡さんの「ハルユタカ」です。
楽天市場で販売されています⇒楽天へ
「はるゆたかブレンドプレミアム7」
~江別製粉とmamapanコラボのオリジナル小麦粉~
「ハルユタカ」70%に中力粉「きたほなみ」などブレンド、きめ細かく絹のようなモチモチ食感、ふっくら感があり、天然酵母との相性もよく、小麦本来の味が楽しめます。
4)秋まき小麦のパン用粉(強力粉)の登場
”秋まきの強力粉”「キタノカオリ」と「ゆめちから」
「秋まき小麦」は基本、中力粉などのグルテン量の低い粉しか採れなかったのですが、
近年、品種改良により「秋まき小麦」の強力粉が登場し、収穫量も増え、安定供給が可能になりました!
特に”ゆめちから”は外国産小麦にも引けを取らない「超強力粉」です。
青々と元気に育つ”ゆめちから”です,゚.:。+゚
「ゆめちからブレンド」
超強力粉「ゆめちから」55%以上だから実現できたボリューム感!
ブレンドにより、製パン性もアップ!
もっちりとした弾力と、北海道産小麦の自然な甘み♪
最近は、国産小麦のパンが市販でも流通し、国産小麦100%のパン屋さんが増えてきたのもそのおかげなんだよ!
”ゆめちから”は安定供給が進み、”春よ恋”と共に「国産強力粉」の代表となりました。
”キタノカオリ”は、雨に弱く”穂発芽”に悩まされながらも生産は続いています。
”ほはつが”って病気、よく聞くけどどういう現象なの?
Ⅲ. 「穂発芽」(ほはつが)ってどういうこと?
1)「穂発芽」とは?
ムギやイネに発生する現象で、作物のタネが穂についたまま「芽」を出してしまうこと
特に、秋まき小麦”キタノカオリ”は、雨に弱く穂発芽しやすい特徴があります。
2)原因は2つ
収穫時期に長雨が続くことにより、
- 湿度が高まり、水を含み続けることよって発芽する。
- 気温が低下することにより”アブシジン酸”が働かなくなり発芽する。
植物ホルモンの一つで、種子休眠や種子発芽の抑制を調節する機能があります。
”アブシジン酸”は、気温25℃以上で最もよく働くため、気候変動により25℃を下回る気温が続くと、抑制がきかなくなります。
3) 穂発芽になると・・・
デンプンやタンパク質が分解されてしまうので、パン用小麦としては値がつきません。飼料として安く売れればいい所、農家にとっては大打撃となるのです😭
そんなリスクを背負いながらも、日本の小麦を絶やさないよう、小麦農家さんやたくさんの関係者さんたちは、がんばっているんだね!
「キタノカオリ100」
独特の鮮やかで黄色みの強い粉色をしていますが、香りが良くやや甘みがあり、クセのないマイルドな風味です。
粘弾性があり硬くしっかりした生地になります。
良かったら「国産小麦」でパンを作ってみてくださいね!
読んで頂いてありがとうございます♡
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